大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和26(あ)1979 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人芳井俊輔の上告趣意第一点について。

論旨は、本件第一審裁判所において、弁護人から証拠調の請求をしたにもかかわ

らず裁判官はこれが採否の決定をしなかつたということを前提として原判決の違法

及び違憲を主張しているが、記録(一七一丁)を調べてみると、所論証拠調の請求

については、裁判官は「之を全部却下する旨決定を宣告した」と公判調書に明らか

に記載されているのであるから、論旨はすべて誤つた前提に立つものであつて採用

することができない。

同第二点及び第三点について。

論旨は事実誤認又は単なる訴訟法違反の主張に帰し(就中第二点(イ)の主張が

誤つた前提に立つものであることは前記第一点について述べたところによつて明ら

かである)いずれの点も適法な上告理由とならない。

弁護人山田義夫の上告趣意第一点について。

原審に提出された芳井弁護人の控訴趣意書第二点には、被告人は本件自転車窃取

の事実を否認しているにもかかわらず、第一審判決は恰も被告人が右の犯罪事実を

供述しているかの如く誤解して、その供述を証拠に採用し事実を認定したことは証

拠によらない認定であり、又事実の誤認であると、主張されている。これに対して

原判決は、第一審判決は被告人の公判廷における供述を被告人の自白として援用し

ているのではなく(すなわち供述の中から外形的事実のみを証拠に採用したものだ

ということになる)、また第一審判決援用の証拠を総合すればその判示事実を肯認

するに十分であつて、第一審判決が採証、認定を誤つたものとは認められない、と

いう判断を示している。それ故に原判決に所論のような判断遺脱ありとは言い難く、

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判断遺脱あることを前提として違憲を主張する論旨は採用することができない。

同第二点について。

所論援用の判例は本件に適切でない。のみならず原判決は、第一審判決が被告人

の公判廷における供述を証拠として採用したのは、自白としてではなく、外形的事

実についての供述を採証したものであり、犯行否認の供述は採用しなかつたものと

してこれを是認しているのであるから、第一審判決挙示の各証拠の間には相矛盾す

る点なく、所論援用の判例と相反するものではない。論旨は理由がない。

同第三点について。

所論引用の判例の趣旨とするところは、刑訴三〇七条に書面の意義が証拠となる

証拠物というのは、書面の意義のみならず、その存在叉は状態が証拠となるものを

指し、書面の意義のみが証拠となる場合には証拠書類である、というにある。一方

原判決は「所論の書類はいずれも本件被告事件のため作成された訴訟上の書類であ

つて、証拠書類に当るものであることは、該公判調書及び右各書類の内容に徴し明

らかである」と言つているだけであるから、前記判例と相反した判断を示している

ものでないこと明らかである。尤も前記判例には、証拠書類であるか否かは、「当

該訴訟について作成されたと否と」によつて区別すべきでないと述べているが、そ

れとても当該訴訟について作成された書類はすべて証拠書類ではないというのでは

ないから、原判決が「本件被告事件のため作成された訴訟上の所類」を証拠書類と

したことと矛盾するものではない。それ故に原判決には所論のような判例違反はな

く、論旨は理由がない。

同第四点について。

論旨は事実誤認の主張であつて適法な上告理由とならない。

同第五点について。

論旨は単なる訴訟法違反の主張であつて適法な上告理由とならない。(なお前記

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第一点及び第二点についての説明参照)。

なお記録を調べてみても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見を以て、主文のとおり判決す

る。

昭和二八年二月二四日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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